ブログ

みなさん、こんにちは。ノース・ヒルの五行です。
ブログ第1弾を見てくれた方、ありがとうございます。

実は6月で定年退職になりますので、なんと今回が最終回です(哀笑)。
「第2回で最終回記念のブログ」(笑)、よかったらぜひ見ていってくださいね~。

校正仙人による共同通信社『記者ハンドブック』の校正・校閲クイズ

――時はバブル崩壊(1991年3月)の3年後の5月、深夜の東京某所の風呂なしアパートの一室。五行知林、31歳校正専業1年目のこと。

「知林くん、私は校正仙人の【だいちりん】といいます。あなたは都内の出版社の校正室に入社したそうで…おめでとうございます」
「(これは夢だ。明晰夢(めいせきむ)というやつだね)あ…どうもありがとうございます」

「では、〈校正の仙人業界〉からのお祝いです。共同通信社『記者ハンドブック』の校正・校閲クイズを用意しましたので、あなたの用字用語の基礎の実力がどのくらいあるかみてあげましょう」
「わかりました。やってみます」

問 題 
【共同通信社『記者ハンドブック』第14版を参考にした出題10問】〈1問各4点で25問=100点満点〉
※下記の()内の例から1つを選んでください。

①黒(ずくめ・づくめ・ずくし・づくし)の服の男性、料亭で松茸(ずくめ・づくめ・ずくし・づくし)
②腹の虫が(収・納・治・修)らないので、力(ず・づ)くで調子(ず・づ)いてみた。
③おまち(どう・どお)さま。言われた(とお・とう)りに麺は(硬・固・堅・難)めにしましたよ。
④横綱の立ち(合・会)いの場面に立ち(会・合)う。
⑤JR(市ヶ谷・市谷)駅から(市ヶ谷・市谷)田町の最近住所が(変・代・替・換)わったカレー専門店で日(変・代・替・換)わりサービスカレーを頼む。辛いので水を何回もお(変・代・替・換)わりした。
⑥こんにち(は・わ)、今日は雨が降る(は・わ)降る(は・わ)、不快だ(は・わ)~。
⑦パニク(っ・ッ)てバリ(っ・ッ)と障子破く。
⑧学年の枠を(越・超)えて、クラスの垣根を(越・超)えて学園祭を楽しもう。
⑨遺伝子組み(変・代・替・換)え食品。
⑩飛行機の(離発着・離着陸)を見るのが好きだ。

※解答は割愛します。読者の皆さん、チャレンジしてくださいね。

「知っていても資料・辞典類を確認すること」が校正の質を上げる

「13個正解。100点満点中52点だね。どうした。落ち込んだ?」
「自信なくしました。…自分の知識ってあいまいなレベルだって気づかされました」

「この問題に出てくるレベルの用字用語については記者ハンドブック等を引きこなせれば正確な情報にたどり着くことができるよ。検索の技術も大切だから訓練するようにね。わかっていても資料を毎回当たること、辞典類を確認することが校正の質を上げることになる。〈おさめる〉〈かわる〉などの頻出する難しい用字用語などは毎回必ず引くといいよ」
「覚えてしまえば引かなくてもいいんじゃないんですか?」

「用字用語は熟練しても判断がつきにくいものがあるから…記者ハンドブック・辞典類の用例はとても助かるものだよ。例えば、新聞社の校閲記者は現場に行くとわかるけれど、皆がひっきりなしに記者ハンドブックを引いている。校正の場においてもベテランの校正者ほど慎重に確認しているように自分には思えるね…人間には、膨大な量の情報の丸暗記は無理だし…人間は間違えて記憶したり勘違いしたりすることもあるからね。頭がうまく働いていない時間帯だってある。そういうときにこそ、資料で確認する作業習慣は品質にもかかわってくると思うよ。改めて〈記憶を刻む〉という作業は……それまでの知識を再確認し、新たな知識を加え、その人なりの新しい気づきや発見がある… 校正・校閲者にとっては有益なものだよ」
「確かに、この仕事を始めて改めて〈勘違いして覚えていたこと〉に気づくことが結構あります」

「記者ハンドブック類は改訂や増刷時点でそれまで掲載されていた用例がかわったり、多少意味や解釈が変更されたりすることがあるのは知っているかい?」
「え? 知らなかった」

「有名な大辞典類も改版・増刷時に内容がかわることがあるから注意してね。それに、もともと各版元により解釈が異なる言葉もあるし…日本語が時代とともにかわっていくことも把握する必要があるし…辞典類とは常にうまく付き合っていく必要アリだよ」
「確かに、日本語として間違っているけど通用し始めている言葉とかはありますよね。現場では教科書には載ってないような難問や困難な状況に出くわすし、鍛えられるな~って感じますね」

校正は技術…自分の技量をスペックとしてとらえ、客観分析して訓練していくしかない

「〈校正は技術〉だから…自分の技量をスペックとしてとらえて、自分のミスの傾向などを客観的にできるだけ冷静に分析して自分を鍛えながらいたわりながら励まして、成長させる視点で勉強しながら訓練していくしかないんだよ」
「校正技術…習ってきました。いまも勉強してます。けれど、〈一字一字照合〉とか、〈辞典類を必ず引く〉とか、〈版面や組版上のルールを確認する〉とか、現場ではあんまり校正技術が重要だとは考えられていない感じがするんですよ。みんな読解力中心で読んでミスを見つけることを重視しているように感じてしまいます。組版ルールなんて、指摘してもスルーされるケースもありますしね」

「現場ではそういうこともないわけじゃないけど…〈校正技術を学んでやっていくこと〉と〈フィーリングで我流でやっていくこと〉とでは、目的地に地図をもってあらかじめ確認して行くか、行き当たりばったりで行くかくらい違うんだよ。校正技術を習得することが早道なのは自明のことだよね」
「ええ…」

「ふふふ。なんだか不満そうだね。ははは。ケースバイケースで経験を積んで、案件に対する〈校正の可動域〉 を広げて、振り回されないだけの知識・経験を身に付けることだね。校正のプロとアマチュアの差は、どんな状況であっても〈コンスタントであるかどうか〉にある。大当たりと大失敗を繰り返しても信頼にはつながらない。それにはコンスタントな結果を残していくこと…好不調の波をカバーして安定したパフォーマンスにつながる〈校正技術〉はなによりの財産=信頼の糧になるんだよ。いずれわかるさ」
「まだ、プロ1年目ですし…経験積むしかないですね。まだまだ道は遠いな~」

「いまの君は〈すべての終わった校正ゲラの控え〉をとっていて、〈仕上がり品との照合確認〉をしているんだろう? 〈辞典類で調べながらの勉強〉とかしながら…」
「はい。やはり、自分の校正結果がどうだったかを知りたいし、やりっぱなしじゃあ自分に何が足りないのかだってわからないじゃないですか? もっとできる校正者になりたいんですよね」
「その意気や、よし!…その確認作業や勉強、ずっと続けられるといいね」
「ずっと続けるつもりです。それに…あなたくらいの年齢まで〈校正のプロ〉として続けたいと思ってます」
「それは達成されるのだよ!…実は私は60歳の君だ。未来の知林なのだ!」
「えーっ!」
「驚いた? 60歳まで〈校正のプロ〉でいられるのは、やっぱりうれしいかい?」
「60でまだはげてなくてよかった~」
「そこ?」

〈おしまい〉
※皆様のキャリアがますます輝きますように、祈っています。どうも、ありがとうございました。

最後の一句 「〈還暦に感激〉ダジャレと気付かれず」(知林)

セミナー抄録 第3回「コンバージョン最適化について(前編)」
セミナー抄録 第4回「コンバージョン最適化について(後編)」 
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