
今年の夏は記録的な猛暑でしたね。
「外、出たくねー」
と心の中で叫んでも、撮影があれば、どんなに暑くても、どんなに寒くても外でのロケを行わなければなりません。
撮影現場ではスムーズな進行を心掛け、気候・環境に応じて熱中症や日焼け対策、防寒などを行っていきますが、それでも本番中は我慢が必要です。カメラマンが寒さに耐えながら指先の震えを抑えているのを横目に見ながら、ディレクターの私は陰ながら応援しているのです。
このように各季節における撮影ネタはたくさんありますが、今回は別の切り口で撮影と季節の関係を取り上げていきます。
例えば、夏向け商品の広告を出す場合、撮影はそれより前の春に行わなければなりません。それはつまり、春なのに「夏のフリ」をして撮影をする、ということなんです。
今回は「撮影に季節は関係ない!」をテーマに、映像の季節感とは異なる時期に撮影しなければならない状況での、エピソードを紹介していきます。
息を吐くな

これは春のシーンを撮りたいのに、実際の撮影は冬、というケースですね。
そんなときは、演者さんに息を吐かずに我慢していただくのですが、セリフがあるときがとても大変です。
「息を吐かないで喋るなんて無理でしょ?」と思いながらもお願いし、演者さんに笑顔で頑張って頂くしかないのです。
汗をかくな

「汗を我慢してください!」とは、さすがに言いません(笑)
撮影直前までうちわで扇いだり、メイクさんにこまめにケアして頂いたりして対応します。 この撮影を終えた後のビールは、美味いでしょうね!
緑を探せ

桜や紅葉など、その時期でしか撮れないものは別として、なるべく緑のキレイな時期に、しかも晴れた日に撮りたいものです。
しかし諸事情で、冬に撮影しなければならないケースが多々あります。
そしてクライアントから「春のイメージでお願いします」と言われ、「まじか・・・」となるのです。
そんなときは、まずロケ地選びが重要です。
ロケハンで、例えば常緑樹(一年中、葉がついている植物)が多めの場所を探したりします。
どこで、どんなカットを撮るか、「50mmのレンズで、こう切り取れば、春っぽく見えるかな」などとイメージしながらロケ地を選定します。
ある程度、ベースの緑が撮れれば、後は編集時のカラコレなどで「冬には見えない」映像に仕上げることができます。
雪を降らせ

雪を降らすだけであれば、After Eeffectsを使って合成すれば、それほど難しくはありません。
しかし、あるスノーブーツのCM案件では、雪の上を歩くシーンのアップショットが必要でした。制作期間や予算などを考えると、足元のアップを全てCGでつくるのは難しい状況です。
撮影は11月。リアルに雪のあるロケ地での撮影は現実的ではありません。
人工雪の室内スキー場での撮影も検討したものの、ロケーション的にイメージと合わせるのが難しいことから、最終的にスタジオで人工雪を敷いて撮影する方法を選びました。
とはいえ、上手くいくのか不安がありました。
「まあ、とにかくやってみよう」ということで、Amazonで人工雪を注文して、雪をつくってみました。
最初は小麦粉のような小さい粉状ですが、水を含ませるとどんどん膨らみ、あっという間に雪になりました!
すっかり子どものように、はしゃぎましたね(笑)
その後、スタジオでテスト撮影を実施。
人工雪を大量に購入して持ち込むわけにもいかないので、どれくらいの範囲まで雪を敷くのか、どれくらいの厚みがあるとリアルに見えるかなどを検証し、上手く合成するためのポイントを探っていきました。
テスト撮影をすることはそれほど多くありませんが、特殊な撮影をする場合は必須です。
撮影が成功する確信を持って、本番に臨むことができました。
撮影時も、だんだん雪が崩れるなどの苦労があったり、その後の合成も難航したりと、そんなに簡単には終わらないものですが、こういった手づくり感のある撮影は楽しいものです。
<実際の制作手順>
(1)グリーンバックのスタジオで、人工雪を敷いて撮影。

(2)編集でグリーンの部分を削除。

(3)背景画像と合成し、CGで雪を降らせるなどしながら馴染ませます。

■まとめ
映像で「どのように季節を表現するか」はとても重要ですが、それと同時に「季節をつくる」ためのノウハウやスキルも重要なところが、映像制作の奥深さです。
写真だと簡単に合成したり、消したりできても、映像だとそうはいかないですからね! (※技術の進化で、数年後は簡単になるかもしれませんが・・・)
どこかの機会で、また別の季節ネタを取り上げたいと思います。
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